ここでいう食費は、家計調査の用途分類の「食料」に合わせます。比較するのは全国の二人以上の勤労者世帯で、2025年平均の1世帯当たり1か月の金額です。自営業者や無職世帯を含む二人以上世帯全体の平均とは区別します。1
食費の割合は「生活費」と「手取り」で意味が変わる
総務省統計局の家計調査の用語と計算式によると、エンゲル係数は食料費を消費支出で割った割合です。消費支出は商品やサービスへの生活費で、税金・社会保険料は非消費支出に分かれます。給与の額面をそのまま分母にした割合とは違います。2
可処分所得は実収入から税金や社会保険料などを引いた、いわゆる手取りです。食料を可処分所得で割れば、入ってきた手取りのうち食料へ向かった比率を示せます。さらに可処分所得から消費支出を引いた差が「黒字」です。この三つを同じ月でそろえると、食費の構成と収支の余地を別々に見ることができます。2
「3割」という線をまたいでも、それだけでは必要な食事を削るべきかは分かりません。食費が同じでも、食費以外の消費支出が減れば、分母が小さくなって食費割合は上がります。支出を抑えた結果、割合が高まることも計算上あり得ます。割合の上下と、財布から出た食費の増減は、まず分けて扱いたい数字です。2
直近の状況としては、2026年7月の二人以上世帯全体の食料支出は月9万5681円で、前年同月比は名目2.2%増、物価変動を除く実質では1.3%減でした。これは品目分類による月次の近況です。以下の勤労者世帯・用途分類・年平均の表へ足し引きせず、個々の食品の購入数量が同じ比率で減ったとも読み替えません。3
収入階級をそろえると、食料の金額と割合は逆に動く
比較に使ったのは、2025年の年間収入五分位階級別の詳細表の「勤労・全国」です。年間収入が低い順に世帯を五つのグループへ分けた平均を並べます。表の年収は各階級の平均であり、「年収400万円以下」などの境界額ではありません。12
| 階級(平均年収) | 食料 | 消費支出 | 可処分所得 | 食料/支出 | 食料/手取り |
|---|---|---|---|---|---|
| 第Ⅰ(400万円) | 73,096 | 244,375 | 316,544 | 29.9% | 23.1% |
| 第Ⅱ(602万円) | 83,395 | 289,109 | 417,517 | 28.8% | 20.0% |
| 第Ⅲ(749万円) | 91,729 | 326,824 | 490,703 | 28.1% | 18.7% |
| 第Ⅳ(924万円) | 101,005 | 375,492 | 591,049 | 26.9% | 17.1% |
| 第Ⅴ(1389万円) | 119,719 | 495,685 | 846,230 | 24.2% | 14.1% |
第Ⅰ階級の食料費は月7万3096円、消費支出は24万4375円なので、割合は29.9%です。第Ⅴ階級は食料費が11万9719円と多くても、消費支出49万5685円に対する割合は24.2%にとどまります。表示した割合同士の差は5.7ポイントです。食費の金額が少ない方が、生活費の中で軽いとは限りません。1
分母を可処分所得へ替えると、第Ⅰ階級は23.1%、第Ⅴ階級は14.1%です。第Ⅱ~第Ⅳ階級も20.0%、18.7%、17.1%と並びます。例えば第Ⅰ階級の計算は7万3096円÷31万6544円×100です。割合は小数第2位を四捨五入して小数第1位で表示し、公表された丸め済みのエンゲル係数から食料費を逆算してはいません。1
次に外食と、それ以外の食料を分けます。ここでの「外食以外」は食料合計から外食を引いたMoney Nowの再集計です。野菜や肉などの材料だけでなく、調理食品、菓子、飲料、酒類なども含みます。「その他食料」という一つの公表費目や、節約できない最低限の食費を表す数字ではありません。1
| 階級 | 外食 | 外食以外(計算) | 黒字 | 世帯人員 | 世帯主年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第Ⅰ | 9,849 | 63,247 | 72,169 | 2.84 | 54.3 |
| 第Ⅱ | 14,066 | 69,329 | 128,408 | 3.11 | 50.6 |
| 第Ⅲ | 17,331 | 74,398 | 163,879 | 3.26 | 50.0 |
| 第Ⅳ | 21,210 | 79,795 | 215,557 | 3.37 | 49.9 |
| 第Ⅴ | 30,949 | 88,770 | 350,544 | 3.41 | 50.3 |
外食は第Ⅰ階級9849円、第Ⅴ階級3万949円です。外食以外はそれぞれ6万3247円、8万8770円となります。第Ⅴ階級の食料費が大きいことには外食の差も関わりますが、外食以外の購入額にも差があります。食費合計だけから、同じ費目を同じだけ減らせるとは考えられません。1
内訳の読み方にはもう一つ注意があります。統計の外食には学校給食も入り、第Ⅰ階級では537円、第Ⅴ階級では1089円です。また、調理食品は外食以外に含まれ、月1万1470円と1万6361円です。外食の全額を自由に減らせる支出と扱ったり、惣菜を外食へ重ねて計上したりすると、家計簿との比較がずれます。1
積立余力への影響は、割合より残る金額で確かめる
食料の支出額が大きい階級ほど、手取りに占める食料の割合は小さくなっています。貯蓄へ回す余地を考えるには、食費の金額や消費支出に占める割合だけでなく、手取りとの差額を同時に見る必要があります。12
公表された月の黒字は、第Ⅰ階級7万2169円から第Ⅴ階級35万544円まで開きがあります。これは預金口座にそのまま積み立てられた額ではありません。黒字と、預貯金・保険の出入りから算出する貯蓄純増は定義が異なります。借入金の返済など、消費支出には入らない資金の使途もあるため、積立可能額は自分の返済予定を踏まえて考える必要があります。12
第Ⅴ階級について、表の可処分所得84万6230円から消費支出49万5685円を引くと35万545円です。公表黒字35万544円との1円差は、各項目を表示単位に丸めているために生じます。この記事では黒字欄は公表値を使い、表示値による引き算の結果と混同しません。14
Money Nowの家計試算として、食費が月5000円増え、手取り、食費以外の支出、返済などが変わらない場合を置きます。毎月の資金余力は5000円小さくなり、12か月続けば5000円×12=6万円の減少です。収入階級が違っても、同じ増加額、同じ継続期間という仮定なら、減る金額そのものは同じです。2
一方、もともとの余力に対する大きさは異なります。公表黒字を比較用の基準にすると、5000円は第Ⅰ階級の黒字の6.9%、第Ⅴ階級では1.4%に当たります。これらは階級平均に同額の増加を機械的に重ねた計算で、実際にその階級の食費が5000円増えたという調査結果ではありません。12
自分の家計に置き換えるなら、毎月3万円を積み立てる計画で、その原資だけが食費増の影響を受ける例では、積立に回せるのは2万5000円になります。年額は36万円から30万円です。これは計画を直すための仮定であり、食費を必ず5000円削ればよいという推奨額ではありません。賞与や臨時支出、利息・運用損益、追加の物価変動はこの計算に入れていません。2
人数と年齢の違いを消すと、比較の結論も変わる
第Ⅰ階級の世帯人員は2.84人、世帯主の平均年齢は54.3歳です。第Ⅴ階級は3.41人、50.3歳で、人数も年齢も同じではありません。この階級差を、同じ家族の収入だけが増えた場合の効果とは読めません。1
たとえば食料費を平均世帯人員で単純に割ると、第Ⅰ階級は月2万5738円、第Ⅴ階級は3万5108円です。世帯全体の比較より差の見え方は変わります。ただし、これは平均額同士の割り算で、個々の人の平均食費や年齢を調整した適正額ではありません。子どもと成人の食事を同じ条件にそろえる計算でもありません。1
年次平均を毎月の積立額へ直接当てはめることにも注意が必要です。可処分所得の年平均には賞与などの収入が反映されます。賞与が入らない通常月の手取りだけで暮らす家計は、年平均の黒字が大きくても、毎月その金額を積み立てられるとは限りません。通常月の収支と、賞与から確保する年単位の資金を分けると、積立の原資を二重に見込まずに済みます。12
また、食料以外の支出を減らせた月は、食費割合が上がっても黒字が増えることがあります。逆に、高額な耐久財を購入して消費支出が増えた月は、食費割合が下がっても残額は減り得ます。自分の前年同月や通常月と比べる際には、その月だけの大きな買い物を併記してください。比率を改善したかどうかと、積立を続けられるかは、同じ判定ではありません。2
編集部の見方:次月の積立は、食品の内訳と返済後の残額から
家計簿では、まず自分の世帯が買った食品を、外食と外食以外へ同じルールで分けます。調理食品を両方に入れず、比較する期間もそろえます。次に食料を含む生活費全体と手取りを並べ、食料/生活費、食料/手取り、手取り-生活費を計算します。カード利用と口座引き落としを二重に支出へ入れないよう、記録方法を統一することも必要です。2
分類をそろえる際は、統計局の収支項目の分類案内で、自分の家計簿の費目が消費支出か、それ以外の支払かを確かめられます。生活費を差し引いた後も必要な返済等を一覧にし、残したい資金と実際に確保できる金額を比べるのが最初の作業です。2
この確認に制度上の固定期限はありません。食費割合を平均まで下げることを目標に先に食事を削ると、何の支出が積立を圧迫したのかが見えにくくなります。逆に、割合だけを理由に問題なしと決めるのも早計です。予定していた積立額との差を円で出し、食費増が続く月数を掛ければ、調整する必要のある金額を具体的に把握できます。2
Money Now編集部は、食費の割合を下げることより、必要な食事と無理なく続く積立額を両立できる残額を確かめることが先だと考えます。次月の積立額を決める前に、同じ月の食料・消費支出・手取りを並べ、外食などの内訳と返済後の残額を一度書き出してください。12






