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NVIDIAとTSMCは何が違う?設計から製品になるまでの4段階で、Arm・ASML・日本企業の役割を図解

設計する会社、製造を請け負う会社、工場へ装置や材料を届ける会社。企業の役割を図でつなぎ、ウエハ・ダイ・パッケージの違いと、IDMやメモリの分類を整理します。

手袋をした手でシリコンウエハを支える、半導体製造の編集部イメージ(AI生成)

NVIDIA、TSMC、Arm、ASML。半導体の話題で並ぶ企業名を見ても、どこが何を担当しているのか、同じ仕事をしているのかは分かりにくいものです。日本企業では東京エレクトロンや信越化学に加え、味の素も登場します。企業名を工程の中に置いていくと、一つの製品を支える分業の仕組みが見えてきます。

半導体の企業を見分けるときは、その会社が「何を、誰に提供しているか」を見ると整理しやすくなります。まず製品になるまでの流れをつかみ、その中に企業名を置いてみましょう。

設計から製品になるまでを、4つの段階で見る

この記事では、半導体を使った製品ができるまでを「設計」「ウエハ製造」「組立・検査・パッケージ」「機器への組み込み」の4段階で整理します。最初に回路を考え、それを材料の上に作り、使える形に仕上げ、最後にスマートフォンなどへ組み込む流れです。12

半導体の設計、ウエハ製造、組立・検査・パッケージ、機器の組立の流れと、EDA・設計IP・装置・材料を提供する企業の役割を示す業界マップ
半導体業界の工程と企業の役割。各社の事業の代表例を配置。図を大きく開く / 企業例の出典一覧

図の黒い矢印は、設計データや半導体が次の工程へ渡る流れです。青は設計ソフト・IPの提供、緑は装置・材料の供給を示します。青と緑の企業は、黒い矢印の途中で順番待ちをしているのではなく、各工程が成り立つための道具や技術を提供しています。

NVIDIAとTSMCは、引き受けている仕事が違う

NVIDIAは、画像処理やAIの計算などに使うGPUを設計し、その製造を外部の企業に委託する「ファブレス」の代表例です。ファブレスは、自社の半導体製造工場を持たずに事業を行う形態を指します。AMDもファブレスで、Qualcommも半導体事業の大部分でこの方式を採用しています。345

一方、TSMCの中心的な仕事は、顧客から依頼された半導体の製造です。こうした受託製造を担う会社を「ファウンドリー」と呼びます。NVIDIAの公式資料も、製造を委託する先としてTSMCやSamsungを挙げています。NVIDIAが製品を設計し、TSMCなどが工場で製造するという、分業の関係があるわけです。367

NVIDIAが回路を設計し、TSMCへ製造を依頼する。ファブレスとファウンドリーの分業を示す図。
NVIDIAとTSMCを例にした、設計と製造の役割分担。36

設計を行うのは、半導体を売る会社だけではありません。Appleは自社の機器向けにMシリーズなどを、GoogleはPixel向けにTensorなどを開発しています。自社製品に必要な性能や機能から半導体を設計する立場も、業界マップの「設計」に入ります。自社設計という言葉だけで、自社工場での製造まで意味するわけではありません。89

ウエハ、ダイ、パッケージは何が違う?

ウエハは、回路を作り込む土台になる薄い円盤です。代表的な材料はシリコンで、1枚のウエハの上に多数の回路を並べて作ります。この一つひとつの回路領域を「ダイ」と呼び、切り出した後の小さなチップ本体もダイと呼びます。1

ダイは、そのままでは壊れやすく、機器の配線とも接続しにくいため、保護や外部との電気的な接続のために仕上げます。これがパッケージングです。複数のダイを一つのパッケージにまとめる技術もあり、「完成した半導体1個=中のダイも必ず1個」とは限りません。267

回路を並べて作る円盤がウエハ。切り出したチップ本体がダイ。ダイを保護し外部とつなぐ形にしたものがパッケージ。ウエハ上の回路領域もダイと呼び、複数のダイを一つにまとめる場合もある。
ウエハ、切り出したダイ、パッケージの模式図。パッケージは中が見えるように描いています。12

最初の業界マップの「ウエハ・ダイ」という表記は、製造側から次の工程へ渡るものを示しています。回路を作った円盤の状態で渡す場合も、切り出したチップの状態で扱う場合もある、という意味です。検査も最後の一度だけではなく、ウエハの状態やパッケージに仕上げた後など、複数の段階で行われます。10711

Armの設計IPとEDAは、設計の中身と道具を支える

設計する企業が、すべての回路を毎回ゼロから作るとは限りません。ほかの設計に組み込める回路の設計資産を「設計IP」と呼びます。Armが提供するCPU(演算などを担う中核部品)の設計IPはその代表例で、利用する企業はライセンスを受け、自社のチップ設計に組み込みます。12

EDAは、回路の設計や動作の検証、部品の配置・配線などを支援する、主にソフトウェアを使った設計・検証の道具です。SynopsysやCadenceが提供しています。設計IPがチップに取り込む設計の中身なら、EDAはその設計を作り、確かめるための道具、と捉えると違いが見えます。Synopsysのように両方を提供する企業もあります。131415

EDAは設計会社だけのものでもありません。製造技術に合わせた設計や、チップとパッケージを一緒に考える作業にも使います。図でEDAの帯が広い範囲にかかっているのは、こうした複数の役割を支えるためです。16

ASMLや日本企業は、装置・材料から製造を支える

回路の設計データがあっても、それだけでは半導体は作れません。工場で加工する装置と、その加工に使う材料が必要です。ASMLは、微細な回路パターンをウエハ上に写す露光装置を提供しています。東京エレクトロンは、薄い膜を作る成膜や、不要な部分を取り除くエッチングなどの装置、アドバンテストは半導体を検査する装置を扱っています。17181920

材料の例では、信越化学がシリコンウエハを、東京応化工業が回路形成に使うフォトレジストなどを提供しています。フォトレジストは光に反応する材料で、微細なパターンを作る工程に使われます。2122

味の素も半導体に関わっています。ABFという絶縁材料が、半導体パッケージの基板で使われるためです。ここでいう絶縁材は、基板内の配線層を電気的に隔てる材料です。半導体を包む樹脂全般や、チップそのものを味の素が作っている、という意味ではありません。2324

ウエハに回路を作る工程は「前工程」、組立やパッケージングなどは「後工程」と呼ばれます。装置や材料はそれぞれに必要ですが、供給先は製品によって異なります。図の緑の線は、この分野全体の関係を示しています。2511

ASEやAmkorは、チップを使える形に仕上げる

回路を作り終えた後の組立・パッケージング・検査を請け負う代表的な企業が、ASEやAmkorです。こうした受託企業をOSATと呼びます。検査装置を供給するアドバンテストと、その装置などを使って検査サービスを提供する企業では、担う役割が異なります。26272820

ただし、後工程を行うのがOSATだけとは限りません。TSMCは先端パッケージングも提供しています。工程ごとに必ず別の会社へ渡るのではなく、一つの企業が複数の工程を引き受ける場合もあるのです。完成した半導体は、さらに基板へ取り付けられ、ほかの部品とともに機器へ組み込まれます。672

IDMは事業の形、メモリは製品の種類

Intel、Samsung、Micronのように、自社で半導体の設計と製造を行う企業は、IDMの例として挙げられます。ファブレス、ファウンドリー、IDMは、「設計と製造をどう担うか」という事業の形の違いです。293031

これに対して、メモリは情報を記憶する半導体という製品の種類を指します。「メモリ」と「IDM」を同じ並びの会社分類として覚えると、軸が混ざってしまいます。たとえばMicronはメモリを主な製品とし、設計・製造を自社で行う企業です。31

企業の事業範囲も固定ではありません。Samsungはメモリや演算処理などを担う半導体に加えて受託製造を手がけ、Armも2026年に自社設計のCPU製品を発表しました。図の企業名はその役割を理解するための代表例であり、「この会社はこの箱の仕事しかしない」という一覧ではありません。3032

企業を見るときは「何を、誰に提供するか」

Money Now編集部では、半導体の企業を知る最初の一歩は、企業名をたくさん暗記することより、提供しているものを一言で言えるようになることだと考えます。チップの製品なのか、製造サービスなのか、設計IPなのか、装置や材料なのか。この違いが、各社の事業説明を読む手がかりになります。

気になる企業を一社選び、公式の事業紹介で「何を提供し、相手はどんな会社か」を確かめて、図の上に置いてみてください。「半導体」という大きなくくりのニュースも、製品の注文に関する話なのか、工場を整える投資の話なのかに分けて読みやすくなります。

一次情報・参考資料

  1. 1

    一次情報 · Samsung Semiconductor

    Creating the wafer
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6

    一次情報 · TSMC

    About TSMC
  7. 7

    一次情報 · TSMC

    Advanced Packaging Services
  8. 8

    一次情報 · Apple

    Apple unleashes M1
  9. 9
  10. 10

    一次情報 · Amkor Technology

    WLCSP Wafer Level CSP Wafer Level Packaging
  11. 11

    一次情報 · Semiconductor Industry Association

    Stage 4: Back-end Manufacturing
  12. 12
  13. 13
  14. 14

    一次情報 · Cadence

    Digital Design and Signoff
  15. 15

    一次情報 · Synopsys

    Semiconductor IP
  16. 16

    一次情報 · Cadence

    IC Package Design and Analysis
  17. 17

    一次情報 · ASML

    ASML products & services
  18. 18
  19. 19

    一次情報 · 東京エレクトロン

    Products and Services (all products)
  20. 20

    一次情報 · アドバンテスト

    Products and Solutions
  21. 21

    一次情報 · 信越化学工業

    シリコンウエハー
  22. 22

    一次情報 · 東京応化工業

    半導体製造前工程
  23. 23
  24. 24

    一次情報 · 味の素

    ASV Report 2022
  25. 25

    一次情報 · Semiconductor Industry Association

    Stage 3: Front-end Manufacturing
  26. 26
  27. 27
  28. 28

    一次情報 · Amkor Technology

    Amkor Overview
  29. 29

    一次情報 · Intel

    What is Manufacturing?
  30. 30
  31. 31

    一次情報 · Micron

    Corporate profile
  32. 32

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