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実家を含む遺産5300万円、特例で基礎控除以下でも相続税の申告は必要?土地評価と期限から考える確認の順番

相続人は子2人。土地・家屋・預金の仮定を揃え、特例前後の課税価格と基礎控除を比較します。同居する子の居住・保有条件、原則10か月の期限、未分割の場合の手続きを整理します。

住宅の門の前で、敷地の輪郭だけを描いた紙を手に確認するイメージ写真

預金が1200万円でも、実家の土地と家屋を含めると遺産額の見え方は変わります。今回の仮定では、特例を使う前の合計は5300万円。子2人の基礎控除を上回ります。一方、住まいの土地には評価を大きく下げる特例があります。減額後の数字が基礎控除に収まるとき、相続税の申告まで不要になるのでしょうか。

対象は、日本に住む親が亡くなり、法定相続人が子2人で、配偶者はいない家族です。親と同じ家に暮らしていた子が実家の宅地全部を取得するケースを置きます。土地の金額は売却見込み額ではなく、相続税の計算に使う評価額で揃えます。

土地は路線価、家屋は固定資産税評価額から出発する

国税庁の土地・家屋の評価方法では、路線価がある地域の宅地は、道路に面する標準的な土地の1㎡当たりの価額を使います。路線価図の数字は千円単位。土地の形状などに応じて補正し、面積を掛ける仕組みです。1

今回のMoney Nowの試算は、路線価30万円/㎡、面積120㎡の整形な自用宅地で、補正率を1.0と仮定します。土地は30万円×1.0×120㎡=3600万円です。複数の道路に接する土地や不整形地などは補正の検討が必要で、この1.0をそのまま流用できません。路線価がない地域は固定資産税評価額に倍率を掛ける別の方式です。1

家屋は固定資産税評価額に1.0を掛けるため、ここでは固定資産税評価額500万円をそのまま用います。預金は1200万円、ほかの財産、債務、葬式費用、加算する贈与財産はいずれもないとします。家屋の500万円は購入価格や建築費ではありません。土地の3600万円と足し合わせる数字の性格を揃えることが出発点です。13

評価資料は相続の年分に合わせます。例えば令和8年中に相続で取得した財産には、原則として令和8年分の財産評価基準を使います。申告する年の最新の路線価へ置き換えるのではなく、資料に記された適用期間を確認してください。8

同じ遺産でも、特例前5300万円と特例後2420万円は役割が違う

特例を使う前は、土地3600万円+家屋500万円+預金1200万円=5300万円です。一方、法定相続人が子2人なら、基礎控除は3000万円+600万円×2人=4200万円。今回の合計は1100万円上回ります。子ごとに4200万円の枠があるわけではなく、課税価格の合計から引く控除です。13

一定の居住用宅地に使える小規模宅地等の特例では、330㎡までの対象部分を80%減額できます。ここで120㎡全部が対象になると仮定すると、土地の課税価格に算入する価額は3600万円×20%=720万円。家屋と預金は今回の特例で減額しないため、合計は720万円+500万円+1200万円=2420万円となります。23

仮定の比較。特例前は土地3600万円・家屋500万円・預金1200万円で5300万円。特例後は土地720万円となり合計2420万円。基礎控除4200万円。差2880万円は税額ではない。
出所:国税庁「土地家屋の評価」「小規模宅地等の特例」「相続税の計算」を基にMoney Now編集部試算。金額・面積は仮定。土地全部が要件を満たす場合。比較するのは評価・課税価格であり税額ではありません。123

減った2880万円は、遺産を現金化して受け取れる利益でも、税の減額そのものでもありません。課税価格に算入する土地の価額の減少分です。この仮定では特例適用後の合計が基礎控除以下になるため相続税はかかりませんが、それは必要な特例手続きをしたうえでの計算結果です。234

税額ゼロでも申告が必要になる理由と、10か月の数え方

特例で下がるのは課税価格に算入する土地の価額です。申告をするかどうかは特例前の合計から判断するため、基礎控除を下回る計算結果だけを見て手続きを終えることはできません。24

国税庁の小規模宅地等の特例の適用条件には、同居していた親族について、相続開始直前から申告期限までその建物に住み続け、宅地を相続開始時から期限まで保有する要件があります。面積が限度内というだけで80%減を決められません。相続後すぐに売ったり転居したりする予定は、この条件と一緒に検討します。2

特例を使う旨を申告書に記載し、計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付します。原則として申告期限までの分割も必要です。今回のように特例を使って初めて基礎控除以下になる人は、申告しないまま2420万円という数字だけを採用できません。24

期限は相続税の申告期限と提出方法で確認できます。原則として、死亡を知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内です。例えば1月6日に死亡し、その日に知った場合は11月6日が期限になります。土曜・日曜・祝日などに当たれば、その翌日が期限となります。4

10か月は家族の相続開始を知った日を起点に数えます。路線価の公表日が全員共通の申告期限になるわけではありません。親の死亡時の住所が国内なら、提出先は親の住所地を所轄する税務署です。子の住所地とは限らない点も、書類を用意する段階で確かめておきましょう。4

分割が間に合わない場合は、特例なしの申告を先に行う

実家の分け方が決まらないまま申告期限を迎えても、期限は延びません。未分割の宅地には当初申告で小規模宅地等の特例を使えず、法定相続分などで取得したものとして申告・納税することになります。5

後日の特例適用を見込む場合は、当初の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。原則として申告期限から3年以内に分割されれば特例を使える仕組みがあり、税額が減る場合は分割日の翌日から4か月以内に更正の請求を行います。待っていれば自動で減額されるわけではありません。56

訴訟などやむを得ない事情で3年以内に分割できない場合には、税務署長の承認を受ける別の手続きがあります。未分割のまま時間が経っている家族は、分割見込みと必要な申請期限を先に相談してください。また、同居していた子が取得しないなど取得者が変われば、居住用宅地の要件もその人に合わせて判定し直すことになります。26

編集部の見方:評価の減額より先に、適用できる状態を整える

Money Now編集部は、このケースで優先すべきなのは「どれだけ評価が下がるか」より、「その評価を使える状態を期限までに整えられるか」だと考えます。土地の額、取得する人、申告期限を別々に確定すると、特例への期待を手続きの見通しへ変えられます。24

まず死亡日と死亡を知った日、法定相続人、土地の面積、該当年分の評価資料、家屋の固定資産税評価額、預金を一枚の遺産一覧にまとめます。他の財産や債務、加算する贈与がないかを確認し、特例前の合計と基礎控除を比べてください。そのうえで、誰が土地を取得し、期限まで住み続けて保有できるか、分割の見通しを家族で共有します。1234

評価の補正や分割の扱いが決められないときは、国税庁の税についての相談窓口から相続税・財産評価の相談先を確認できます。「特例前の財産額」「土地を取得する人」「自分の申告期限」を伝えられるようにしておくと、確認すべき条件を絞れます。税額ゼロの見込みを持つことと、手続きを終えることを分けて進めましょう。7

一次情報・参考資料

  1. 1

    一次情報 · 国税庁

    No.4602 土地家屋の評価
  2. 2
  3. 3

    一次情報 · 国税庁

    No.4152 相続税の計算
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7

    一次情報 · 国税庁

    税についての相談窓口
  8. 8

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