ここでは、2023年に親が亡くなり、その年に実家を相続で取得したことも知った子を想定します。兄弟との遺産分割協議は未成立です。固定資産税を払っているという事情だけで、法務局への登記手続きが終わったことにはなりません。まず対象の土地・建物の名義を確かめましょう。1
過去の相続にも期限。未分割なら自分にも義務がある
法務省の相続登記の義務化Q&Aは、施行前に取得を知った未登記の不動産も対象に含めています。今回のように2023年から取得を認識している場合、基本となる期限は2027年3月31日です。1
分割前は、相続人が法定相続分の割合で不動産を共有した状態になります。「最終的には兄が継ぐと思う」「自分は住むつもりがない」という意向だけでは、登記義務の対象から外れません。分割が成立してほかの人が取得することになれば、その不動産についての自分の義務はなくなります。1
一方、親が亡くなった年が古くても、その不動産を相続で取得したことを2024年4月1日以降に初めて知った場合は、知った日から3年以内が基本です。「親の死亡日」と「対象不動産の取得を知った日」は分けて控えてください。過去の相続すべてを一律に2027年3月末へ当てはめると、起算日を取り違えます。1
正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。ただし、期限を越えれば自動的に10万円を請求される仕組みではありません。登記官の催告、裁判所への通知を経て、裁判所が要件と金額を判断します。遺言の有効性等を争って帰属が明らかにならない場合などは、正当な理由となり得ます。単に分割協議中だから期限を気にしなくてよいとは決めず、個別の事情を相談することが大切です。1
登録免許税0円と4万円は、同じ手続きの価格差ではない
期限までに分割結果に基づく相続登記をするのが難しい人には、相続人申告登記があります。亡くなった登記名義人の相続人であること等を申し出る制度で、登録免許税はかかりません。一方、相続で土地や建物の所有権を移す通常の登記には、原則として不動産の価額に対して0.4%の登録免許税がかかります。123
税額計算に使う価額は、売り出し価格ではありません。国税庁の登録免許税の税額表では、固定資産課税台帳に登録された価格があれば原則その価格としています。登録価格がない場合は、登記官が認定する価額です。3
Money Nowの試算として、免税対象外の建物全体について、課税標準を1000万円と仮定します。相続による所有権移転の登録免許税は、1000万円×0.4%=4万円。申告登記の登録免許税0円との差は4万円ですが、これをそのまま「4万円の節約」とは呼べません。後で通常の相続登記をする際の登録免許税を免除する制度ではないためです。23
また、0円なのは登録免許税です。戸籍等の証明書を取得する実費、郵送する場合の費用、司法書士などへ依頼する場合の報酬は別枠で考えます。必要な証明書と通数、依頼範囲が決まってから見積もる部分であり、この記事では一律の総額を置きません。過料の上限10万円も、予定する登記費用には足しません。123
土地には、一定の相続による移転登記などで、課税標準となる価額が100万円以下の場合の免税措置があります。現行の適用期限は2027年3月31日です。今回の4万円は建物の条件付き試算なので、実家の土地と建物をまとめた額に機械的に0.4%を掛けず、対象と免税要件を分けて確認してください。3
本人だけの申出で進められる範囲と、そろえる書類
申告登記の0円は、実家の名義整理をすべて無料で終えられるという意味ではありません。分割の結論を待たずに、自分の基本的な登記義務に対応できる点に、この手続きの価値があります。123
特定の相続人が単独で申し出ることができ、全相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要はありません。登記官の審査後に、申出をした相続人の氏名・住所等が登記へ付記されます。ただし、自分についてだけ申し出ても、兄弟の分まで義務を果たした扱いにはなりません。複数人の連名や代理による申出も可能ですが、誰の分を申し出るのかを明確にします。12
基本の提出書類は、申出書、相続人であることが分かる戸籍の証明書、住所を証する情報などです。子が申し出る一般的な例では、親の死亡日、親子関係、親の死亡日以後に発行された本人の戸籍がポイントになります。一通で必要な事項を満たす場合もあれば、結婚などで戸籍が移っていて追加が必要な場合もあります。2
現在の案内では、申出書に住民票上の氏名のふりがなと生年月日等を記載し、法務局が住基ネットで住所を確認する方法により、住所を証する情報の提出を省略できる場合があります。親の本籍と登記上の住所が違うときには、同一人物と分かる住民票の除票や戸籍の附票等が必要です。手元の書類を見て、足りないものを絞るところから始められます。2
分割が成立したら別の3年。売却する場合にも相続登記が必要
申告登記をした後に分割が成立し、自分が実家を取得した場合は、分割の日から3年以内に、その結果に基づく相続登記が必要です。申告登記だけで、この追加の義務を果たすことはできません。12
すでに分割が成立している人も、その結果に基づく登記の義務を申告登記で代替することはできません。また、申告登記は不動産の権利関係を示す登記ではないため、所有権や持分を確定するものでもありません。実家を売却したり、抵当権を設定したりする場合には、別途、相続登記が必要になります。12
したがって、分割がまとまりそうで売却も予定している人は、通常の相続登記まで進める段取りを先に相談する意味があります。反対に、分割の見通しが立たない人は、自分の期限への対応を待たせないために申告登記を検討できます。選択を変えるのは、目先の税額だけでなく、分割の状況と不動産を処分する予定です。123
編集部の見方:分割の話合いと、期限への対応を並行して進める
Money Now編集部は、分割が未成立の家庭では、「誰が実家を取得するかを決める作業」と「自分の登記義務を期限内に果たす作業」を分けて進めることが有効だと考えます。申告登記は話合いの結論を先取りせず、本人が動ける手続きを残しているからです。12
最初に、登記事項証明書で名義と対象の土地・建物を確かめ、親の死亡日、取得を知った日、分割が成立しているかを一枚に控えます。そのうえで、管轄法務局の予約制の登記手続案内を利用し、「分割未成立で、自分の分の申告登記をしたい」と伝えられるようにしておきましょう。12
申出書を準備する際は、法務省の相続人申告登記の提出書類・子の記載例が入口になります。オンラインでの申出も可能です。申出後も、兄弟それぞれの対応状況と分割成立日を別に記録しておけば、自分の手続きが済んだ範囲と、次に必要な登記を見失わずに進められます。12








