「子どもがいない」という条件だけで、夫婦の年金を同じ扱いにすることはできません。改正が始まる時点の年齢と、どちらの配偶者が遺されるかを分けてみる必要があります。1
女性は年度末の年齢、男性は死別時の年齢を確認
遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定です。施行直後の女性では、対象となる子がおらず、2028年度末時点で40歳未満の人が原則5年間の有期給付の対象になります。2028年度に40歳以上になる女性は、この有期化の影響を受けません。今の年齢だけで線を引かず、年度末までに迎える誕生日を含めて考えます。1
厚生労働省の対象者・経過措置の案内によると、女性は20年かけて段階的に対象が広がります。一方、男性は施行直後から、対象となる子がいない60歳未満の人が新たに5年間の給付を受けられるようになります。年齢による受給機会の差を縮める改正です。14
すでに遺族厚生年金を受給している人や、60歳以降に受給権が発生する人は、今回の有期化で5年へ切り替わりません。既受給者の給付を施行日から数え直す制度ではありません。ただし、現行制度にも再婚などで受給権がなくなる場合はあります。13
ここでいう子は、18歳になった年度の末日まで、または障害等級1級・2級の状態にある20歳未満の子です。対象の子を養育している間の遺族厚生年金の給付内容は現行どおり。新制度の対象者は子がこの年齢範囲を超えた後に、原則5年間の増額給付と、その後の継続給付の仕組みに移ります。成人した子がいることと、制度上の「子がいる」ことは分けてください。42
年80万円の報酬比例部分から、遺族分と有期加算を分ける
給付額を見るため、亡くなった配偶者の報酬比例部分を年80万円と仮定します。これは老齢基礎年金を含む年金総額ではなく、必要な加入月数の調整を済ませた計算用の額です。保険料納付などの受給要件は満たし、中高齢寡婦加算を含まない部分だけを比べます。2
日本年金機構の遺族厚生年金の計算方法では、基本となる遺族分は報酬比例部分の4分の3です。このモデルは80万円×3/4=年60万円。被保険者中の死亡などでは、加入期間が300月未満なら300月とみなして報酬比例部分を計算するため、短い加入記録の額をそのまま使うと過小に見積もるおそれがあります。2
新しい有期給付加算による増額は、厚生労働省が約1.3倍と説明しています。ここでは目安の1.3を掛け、60万円×1.3=年約78万円、78万円×5年=約390万円と試算しました。加算前の年60万円を同じ5年間で単純に合計した300万円との差は約90万円です。将来の正確な裁定額を示すものではありません。12
年金額は物価や賃金の動きなどで毎年度改定されますが、この試算は年額を固定した名目の比較です。遺族厚生年金は所得税の課税対象になりません。一方、他の所得にかかる税や世帯の社会保険料まで計算した家計の手取りではありません。年78万円をそのまま生活費の余裕とみなさないことが大切です。36
中高齢寡婦加算は別制度で、現行では夫の死亡時に40歳以上65歳未満で対象の子がいない妻などに上乗せされます。施行後の新規加算には25年かけた段階的な縮小もあります。今回の60万円と78万円は、この加算を含む全受給者の総額を比べたものではなく、有期化の対象外でも加算の扱いは別に確認が必要です。24
夫婦で二つの収入表を作ると、改正の意味が変わる
同じ子のない夫婦でも、妻が遺される場合と夫が遺される場合では、改正前との比較の出発点が違います。女性の一部には給付期間の変更、男性には受給できる年齢の拡大が生じるため、夫婦で一つの受給見込みを共有すると備えを取り違えます。21
現行では子のない30歳未満の妻はすでに5年間の給付です。子のない夫は死別時55歳以上であることが必要で、受給開始は原則60歳からです。したがって、男性については「今ある無期給付が一律に5年へ減る」とは読めません。比較する相手は、改正前にその年齢で受けられたかどうかです。21
家計では、遺される人自身の収入に、受け取れる遺族給付を加えて固定支出と比べます。モデルの年約78万円は月割り約6万5000円です。継続給付の対象にならなければ、5年間の後はこの給付の入金がなくなります。給与など他の条件を固定すると、家計を支える収入はその分小さくなります。12
ただし、なくなる給付額と、貯蓄から毎月補う額は同じとは限りません。残る人の働く収入と、住居費・通信費など継続する支出を並べてから不足額を出します。夫婦どちらが遺されても同額の貯蓄が必要だと置くより、二つの家計表で確かめる方が改正の違いを反映できます。1
5年後も続く条件と、収入目安の読み方
5年後に年金収入がなくなる想定は、継続給付を受けられない場合に限られます。障害年金の受給権がある人や収入が十分でない人には、増額された遺族厚生年金を引き続き受け取る仕組みがあり、最長で65歳まで続きます。14
厚生労働省の説明では、単身で就労収入が年122万円以下の場合に継続給付が全額支給される目安を示しています。ただし脚注では、2025年度税制改正を反映した地方税所得に基づくと年132万円の見込みとしています。122万円と132万円を同じ時点の選べる基準として使ったり、給与収入と税法上の所得を同じ金額として扱ったりしないでください。1
夫と死別した妻が所得要件を満たし、地方税法上の「寡婦」に該当する場合は、年204万円程度との別の目安もあります。全額支給の目安を上回った瞬間にすべてなくなるのではなく、収入に応じて給付額が調整されます。全額停止は年金額にも左右され、公式説明は概ね月収20万~30万円を超える場合としています。将来の判定では、その時点の所得基準を確認する必要があります。1
編集部の見方:先に確認するのは夫婦それぞれの適用条件
Money Now編集部は、この改正への備えは、必要な貯蓄額を一律に決める前に、夫婦それぞれが遺される場合を別々に書き出すことから始まると考えます。適用される制度と継続給付の可能性が違えば、同じ家計でも補うべき収入の期間は変わります。12
2026年9月時点で、この改正のために現役夫婦が一律に申請・加入しなければならない期限は、今回の公式概要には示されていません。継続給付の具体的な請求様式や提出期限も、今回確認した概要資料には掲載されていません。将来の請求案内が公表された段階で、対象者は必要書類と期限を確かめます。14
まず夫婦の生年月日、子の有無、固定支出を書き出し、それぞれが日本年金機構のねんきんネットで自分の加入記録を確認しましょう。そのうえで、遺される側の年齢と受給条件を公式の案内に当てはめ、継続給付がある場合とない場合の収入を分けて置くことが、今できる具体的な備えです。512








