MONEY NOW

くらしとお金を、数字でわかりやすく。

医療費9万円でも控除を使える?総所得金額等150万円の例で、通常の医療費控除と市販薬の特例を比べて見える選び方

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制を同じ年間支出で試算。控除額は1万5000円と1万8000円ですが、その差が還付額になるわけではありません。対象薬・健診・補填金の条件も整理します。

青緑と黄色を配した無地の未開封市販薬パッケージのイメージ写真

2026年に払う医療費が10万円未満でも、通常の医療費控除を使える場合があります。総所得金額等が150万円なら、計算で差し引く基準額は7万5000円です。市販薬の特例も選択肢に入る人は、支払総額だけで申告を諦めず、所得と薬代の内訳を並べてみる必要があります。

秋に領収書をまとめるなら、合計額に加えて「何に払ったか」を残しておきたいところです。通常の医療費控除に入る費用と、市販薬の特例に入る費用は同じではありません。両方に該当する薬代も、申告では選んだ方式にだけ使います。723

通常控除の出発点は、医療費と「総所得金額等」の組み合わせ

通常の医療費控除は、対象医療費から対応する保険金などを引き、さらに10万円と総所得金額等の5%のうち小さい額を引いて求めます。控除額の上限は200万円。差し引いた結果がマイナスなら、控除額は0円です。総所得金額等が200万円未満では、支出を10万円だけと比べると使える控除を見落とします。13

ここでいう所得は、給与の額面年収や手取り額とは異なります。給与所得は給与収入から給与所得控除を引いて求めるもので、給与以外の所得がある人はそれも含めて総所得金額等を確認します。この記事の150万円は、その総所得金額等がすでに分かっているという仮定です。給与収入150万円の人の試算ではありません。81

国税庁の医療費控除の計算・要件では、自分または生計を一にする配偶者・親族のために、自分がその年中に実際に支払った費用が対象です。2026年分は1月1日から12月31日までの支払いを集計し、未払い分は実際に支払う年へ回します。1

診療・治療費や治療に必要な薬代は通常控除の対象になりますが、病気の予防や健康増進のための薬代は対象になりません。健診費用も原則対象外です。ドラッグストアのレシートは、日用品を除くとともに、薬ごとの用途と特例の対象表示を分けて確かめます。72

年間9万円のうち対象薬が3万円なら、控除額はどう違うか

Money Nowの仮想例として、同じ納税者の2026年の総所得金額等を150万円、通常控除の対象医療費を9万円とします。その9万円の中に、通常控除にも特例にも該当する治療用の市販薬3万円が含まれ、残る6万円は診療費などとします。補填金はなく、本人は特例に必要な一定の取組を済ませた前提です。1724

通常控除で引く基準額は150万円×5%=7万5000円なので、9万円-7万5000円=1万5000円です。一方、セルフメディケーション税制は対象薬代から1万2000円を引くため、3万円-1万2000円=1万8000円。上限8万8000円にも達しません。1211

総所得金額等150万円、通常対象医療費9万円に対象薬3万円を含む仮想例。通常控除15000円、特例18000円、控除差3000円。補填なし、本人の取組あり。
Money Now編集部試算。国税庁No.1120・1129の算式による仮想例。金額は所得控除額で、還付額ではありません。対象薬3万円は医療費9万円の内数です。12

この前提では特例の控除額が3000円大きくなります。ただし、通常控除の1万5000円と特例の1万8000円を足した3万3000円を申告することはできません。同じ人が同じ年に使う医療費控除は、いずれか一方です。312

差を生むのは対象範囲と基準額。還付額とは分けて考える

この例で特例の控除額が大きくなるのは、支出全体が多いからではなく、対象薬に適用する基準額が低いからです。医療費が10万円未満という情報だけでは、通常控除の可否も、特例との優劣も決まりません。12

通常控除には診療費なども入り、特例は対象薬の購入費に絞られます。例えば所得と対象薬代を据え置き、通常対象の診療費が年末までに5000円増えると、通常控除は9万5000円-7万5000円=2万円になります。特例は1万8000円のままなので、今度は通常控除が2000円大きくなります。これは追加支出の影響を見る仮定で、受診を増やす提案ではありません。12

控除額は税金を計算する所得から引く額であり、そのまま口座へ返る金額ではありません。所得税の還付は、源泉徴収や予定納税で納めた額が、年間の所得に対する税額を上回る場合の精算です。したがって、控除差3000円を「3000円戻る」と読み替えることはできません。156

例えば既納付の所得税が0円で、他の所得控除を含めた計算ですでに年税額も0円なら、医療費控除を申告してもしなくても所得税の負担差は0円で、所得税の還付も0円です。この比較では適用税率を置かず、復興特別所得税や住民税を含む税額差は算出していません。年末の所得と既納付税額を確認して初めて、実際の還付を見積もれます。56

国税庁の二方式の選択適用ルールには、選択して確定申告書を提出した後、更正の請求や修正申告によってもう一方へ変更できないとあります。金額の比較は、提出前に済ませる必要があります。3

薬代が同じでも、本人の取組と補填金で結果が変わる

ただし、申告する本人が2026年中に所定の健康診断や予防接種などを受けていなければ、対象薬を3万円購入していても特例は使えません。家族が受けた健診だけでは本人の要件を満たしません。この場合は、通常の医療費控除の条件で判断します。42

対象になる取組には、勤務先の定期健康診断、保険者が実施する健康診査、定期予防接種やインフルエンザの予防接種などがあり、該当するものを一つ行えば足ります。一方、その健診や予防接種にかかった費用を特例の薬代へ足すことはできません。4102

厚生労働省の2026年の対象品目一覧では、2026年9月1日時点のスイッチOTCと非スイッチOTCのリストを確認できます。購入した薬の対象表示と品目を照合してください。同ページには翌年施行の改正情報も並ぶため、2026年中の購入分へ翌年の対象範囲をそのまま当てはめないようにします。9

また、保険金や高額療養費などで補填される場合は、その給付の対象になった医療費から差し引きます。給付額が対応する費用を超えても、余りを他の治療費から引く必要はありません。年間医療費とすべての給付金を一括で引くと、控除の計算を誤ることがあります。医療保険の給付を受ける手続きと、所得控除を選ぶ申告は別に扱います。1

編集部の見方:今は記録を残し、年末の実績で選ぶ

Money Now編集部は、秋の段階では方式を決め切るより、二つの計算に使える記録を残すことが大切だと考えます。所得と医療費は年末まで動くため、今の見込み額で有利な方式が、年間実績でも有利とは限りません。123

まず、領収書を通常対象の診療費・薬代と特例対象薬に区分し、同じ支出を二重に足さない形で集計しましょう。次に所得見込み、給付金が補填する治療、本人の健診等の記録を並べます。年末には実支払額で両方式を計算し、申告前に控除額と税額の欄を別々に確認します。123

国税庁の還付申告の期間と対象によれば、申告義務のない人の還付申告は、原則として翌年1月1日から5年間です。2026年分なら2027年1月1日から2031年12月31日までとなります。申告義務がある人の期限とは異なります。5

申告義務がある人の2026年分の申告期限は原則2027年3月15日です。9月に2026年分の申告を急ぐ制度ではありません。領収書や特例の取組を示す書類は、確定申告期限等から5年間、税務署に提示・提出を求められる場合があるため保管します。今残す記録が、年末に二つの方式から選ぶための判断材料になります。612

一次情報・参考資料

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

    一次情報 · 国税庁

    No.2030 還付申告
  6. 6

    一次情報 · 国税庁

    No.2020 確定申告
  7. 7
  8. 8

    一次情報 · 国税庁

    No.1410 給与所得控除
  9. 9
  10. 10
  11. 11

LATEST

新着記事

新着をもっと見る