日本銀行の2026年7月31日の金融政策決定では、無担保コールレートを1.0%程度で推移させる方針が維持され、1.25%への引き上げ案は反対多数で否決されました。ただし、政策金利1.0%をそのまま住宅ローンの適用金利へ置くことはできません。判断に使うのは返済予定表にある現在の適用金利と、借換え先が提示する資金受取時の金利です。15
固定への借換えを考える人は22.1%、分岐点が分からない人は16.6%
住宅金融支援機構の既存借入者調査は、2025年3月までに住宅ローンを借り、残高1000万円以上・残期間10年以上で返済中の20歳以上70歳未満5000人を対象に、2025年10月17〜27日に行ったインターネット調査です。このうち変動金利タイプは2963人でした。2
変動金利利用者では、「金利水準次第で固定金利タイプへの借換えも検討したい」が14.0%、「固定金利タイプへの借換えを検討したい」が8.1%で、合計22.1%です。一方、「借換えのメリット・デメリットがよく分からない」は16.6%。固定へ移るかどうかは、金利の方向感だけでなく、自分の残高と費用から境目を作らなければ判断しにくいことが分かります。2
残高3000万円・残り25年、固定3.46%と諸費用80万円を置く
2026年9月のフラット35公式金利では、新機構団信付き、借入期間21〜35年、融資率9割以下の最頻金利は年3.460%です。借換融資には融資率9割以下の金利が適用されます。ここでは、残高3000万円、残り300回、元利均等、ボーナス返済なしで、変動金利は現在年1.0%、固定への借換え金利は年3.46%と仮定します。35
借換えの諸費用は金融機関、登記、物件検査などで変わるため、今回は合計80万円を現金で支払う想定です。住宅金融支援機構も、借換えは毎月返済や総返済だけでなく、諸費用を含めた総費用で比べるよう案内しています。80万円は公表平均ではなく、分岐点を計算するための仮定です。45
変動1.0%を25年間一定とする月返済は11万3062円、総返済額は3391万8521円です。固定3.46%への借換え後は月14万9544円、返済総額4486万3279円。諸費用80万円を足した総コストは4566万3279円となります。借換え直後の月額は3万6483円増え、1.0%が続く場合との差は1174万4758円です。36
変動が今すぐ年3.6253%へ上がって続くと総コストが逆転
変動金利が今すぐ別の水準へ上がり、その金利が残り25年間変わらない条件で、総返済額が固定3.46%の返済額と諸費用80万円の合計に等しくなる金利を逆算しました。分岐は年3.625319...%、表示上は年3.63%です。そのとき変動の月返済は約15万2211円となります。36
| 変動金利 | 月返済額 | 25年総返済額 | 固定の総コストとの差 |
|---|---|---|---|
| 年1.00% | 11万3062円 | 3391万8521円 | −1174万4758円 |
| 年2.00% | 12万7156円 | 3814万6890円 | −751万6389円 |
| 年3.00% | 14万2263円 | 4267万9018円 | −298万4261円 |
| 年3.63% | 15万2287円 | 4568万6041円 | +2万2762円 |
| 年4.00% | 15万8351円 | 4750万5316円 | +184万2037円 |
固定3.46%と同じ金利では、変動の総返済額は固定の返済額と同額になり、借換え費用80万円の分だけ変動継続が安くなります。その80万円を埋める水準が3.6253%です。諸費用を30万円と置けば分岐は3.5222%、150万円なら3.7687%。見積額を変えるだけで境目も動きます。46
5年後に上がるなら、分岐点は年4.9818%まで遠のく
年1.0%で60回返済した後に金利が上がり、残り240回の返済額を組み直す別シナリオでは、5年後の残高は2458万4287円です。この残高から固定への借換え総コスト4566万3279円と同じになる金利を逆算すると、5年後から年4.9818%が続く場合でした。年5.0%なら変更後の月返済は16万2245円、全期間の総返済額は4572万2603円で、固定より5万9324円多くなります。36
つまり、金利の到達点だけでは借換えの有利不利を決められません。上昇するまでの時間に低い金利で元金を返せれば、その後に同じ水準へ上がっても全期間の利息は小さくなります。今回の3.63%は「すぐ上がり、そのまま続く」という強い仮定の境目です。将来金利の予測値ではありません。6
固定へ移れるかは返済履歴・住宅・団信・控除でも変わる
フラット35借換融資の利用条件では、住宅取得時のローン借入日から申込日まで1年以上が経過し、申込日前日までの1年間を正常に返済していること、対象住宅が機構の技術基準を満たすことなどを求めています。借入額は100万円以上1億2000万円以下で、ローン残高と担保評価額の200%のうち低い額までです。審査結果によって希望に沿えない場合もあります。5
借換え前の団信は完済で終了し、新しい団信へ入り直す場合は改めて申込みが必要です。また、適用される固定金利は申込時ではなく資金受取時の金利で、毎月見直されます。今回の3.46%は2026年9月の最頻金利であり、実際の取扱金融機関、資金受取月、団信の種類で変わります。35
国税庁の住宅ローン借換えの案内によると、新しいローンが当初ローンの返済用であることが明らかで、償還期間10年以上などの要件を満たせば、住宅ローン控除を引き続き受けられます。ただし、控除期間は借換えで延長されません。新たな借入額が借換え直前残高を上回る場合は、控除対象の年末残高も按分されます。7
最初の15分で、現在金利・固定見積り・耐えられる月額を並べる
- 返済予定表から現在残高、残り回数、優遇後の適用金利、返済方式を転記する
- 固定候補から資金受取時の金利、融資手数料、登記・物件検査費用、団信条件を見積書で取る
- 今すぐ上がる場合と5年後に上がる場合を試算し、月返済の上限と総コストの両方で比較する
- 住宅ローン控除中なら、残り期間と借換え後の対象残高を確認する
住宅金融支援機構の借換えシミュレーションでは、現在返済中のローンと借換え後の月返済・総返済を同時に比べられます。自作の分岐点は候補を絞るために使い、最後は借換え先の見積書、返済予定表、団信の保障、税務条件を同じ表へ置いて確認します。46
Money Now編集部の見方:3.63%より「いつ上がるか」を見る
今回の比較から見えるのは、固定への借換えが「将来の金利上昇を当てれば得をする取引」ではなく、月3万6483円の増加と諸費用80万円を先に負担し、将来の返済額に上限を置く選択だということです。変動がすぐ上がる条件では3.6253%が分岐でも、5年後なら4.9818%まで動きます。金利予想だけで結論を出すと、時間の効果を落とします。346
編集部は、政策金利の見出しを見た日に借り換えるかを決めるより、まず「毎月いくらまでなら返済を続けられるか」を決め、その上限に達する適用金利を返済予定表で計算する方が先だと考えます。固定の価値は最安を狙うことではなく、家計が耐えられない水準を避けることにあります。自分の分岐点が見積金利より低いのか高いのかを確認すれば、今動く理由も、変動を続ける理由も数字で説明できます。246














