事前審査の画面で50年返済へ切り替えると、同じ借入額でも月返済は下がります。ここで見るべきなのは「借りられる額が増えた」ことではなく、同じ家を35年で買う場合と比べて、毎月の余白、完済までの利息、老後まで残る元金がどう変わるかです。今回は全期間固定金利の商品を同じ時点で比較し、返済期間の長さが家計へ与える影響を切り分けます。
35年を超える返済期間は23.4%、ただし50年利用者の割合ではない
住宅金融支援機構の2026年1月調査は、2025年4〜9月に住宅ローンを借りた全国の20歳以上70歳未満の1237人を対象とするインターネット調査です。返済期間は「35年超〜40年以内」が17.9%、「40年超」が5.5%で、合計23.4%でした。2023年10月調査の合計12.6%から10.8ポイント増えています。1
ただし、23.4%は35年を超えた人の合計であり、50年返済だけの利用率ではありません。同じ調査で、住宅ローンを選んだ理由に「35年超の返済期間を選べた」を挙げた人は、フラット35以外の利用者1128人の10.6%でした。長期返済は珍しい例ではなくなりつつありますが、利用者全体の主流とまでは言えない位置です。1
5000万円なら50年は月18万3027円、35年より2万2461円低い
2026年9月の公式金利情報では、融資率9割以下・新機構団信付きの最頻金利は、返済期間21〜35年のフラット35が年3.460%、36〜50年のフラット50が年3.700%です。この2金利を使い、借入額5000万円、元利均等の毎月払い、ボーナス返済なし、金利は完済まで一定としてMoney Now編集部が計算しました。23
| 比較項目 | 35年返済 | 50年返済 | 50年−35年 |
|---|---|---|---|
| 適用金利 | 年3.460% | 年3.700% | +0.240ポイント |
| 月返済額 | 20万5488円 | 18万3027円 | −2万2461円 |
| 年間返済額 | 246万5858円 | 219万6329円 | −26万9530円 |
| 総返済額 | 8630万5046円 | 1億981万6443円 | +2351万1397円 |
| うち利息 | 3630万5046円 | 5981万6443円 | +2351万1397円 |
月返済は50年の方が2万2461円、割合では10.9%低くなります。年間なら約27万円の余白です。一方、この比較の5000万円は、フラット50の融資率上限9割に収めるため、購入価額が少なくとも約5556万円ある想定です。頭金や諸費用を別に用意する必要があり、月額だけを見て購入予算を引き上げる試算ではありません。42
月返済は10.9%減っても、総利息は64.8%増える
この比較では50年返済の総額は1億981万6443円となり、35年返済より2351万1397円増えます。毎月の支払額を10.9%下げる代わりに、支払回数は420回から600回へ増え、総返済額は27.2%、利息だけなら64.8%増える計算です。月額の差より、元金を返す速度の差が長い時間をかけて大きくなります。25
金利差の影響を外すため、両方を年3.700%にそろえると、35年返済は月21万2481円・総額8924万1919円、50年返済は月18万3027円・総額1億981万6443円です。それでも総額差は2057万4524円残ります。比較から見えるのは、50年返済の追加負担の中心が、0.240ポイントの金利差だけでなく、元金を15年長く借り続けることにあるという点です。25
30歳で50年を借りると、65歳時点で2525万4063円が残る
年齢計算上30歳で借り、35年間を予定通り返した時点を比べます。35年返済は65歳で完済しますが、50年返済は残り180回、元金残高2525万4063円です。借入当初の5000万円に対して、35年間で返した元金は約2475万円にとどまります。50年返済では、65歳が完済地点ではなく、なお借入額の約半分を返す途中です。425
この残高は、退職金で一括返済すべきだという結論ではありません。65歳以降も収入が続く、繰上返済する、住み替え時に売却代金で返すなど、家計によって出口は変わります。ただし本申込み前に、定年や収入減を想定する年齢の残高を返済予定表で確認しないまま、月額だけを比較するのは危険です。45
50年を選べるのは、対象住宅・年齢・返済負担率を満たす場合
フラット50の利用条件では、返済期間は36年以上で、「80歳−申込時の年齢」と50年の短い方が上限です。年齢は1年未満を切り上げます。たとえば年齢計算上35歳なら上限は45年で、親子リレー返済などを使わない限り50年を選べません。4
対象住宅も、長期優良住宅、予備認定マンション、管理計画認定マンションのいずれかで、機構の技術基準に適合する必要があります。さらに、すべての借入れを含む総返済負担率は、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下が基準です。つまり、50年返済は「誰でも5000万円を50年で借りられる」選択肢ではありません。4
今回の3.460%と3.700%は2026年9月の最頻金利で、金融機関により異なります。借入金利は申込時ではなく資金受取時に決まり、毎月見直されます。売買契約から融資実行まで時間が空く場合は、この記事の金利を自分の確定条件として使わず、取扱金融機関の見積書で更新してください。24
本申込み前に、月額・総額・収入減時の残高・諸費用を並べる
まず借入額を変えず、35年と利用可能な最長期間の返済予定表を同じ金融機関から取り寄せます。①月返済額、②利息を含む総返済額、③定年や収入減を見込む年齢の元金残高、④融資手数料・団信・火災保険などを横に並べます。返済期間を延ばしたことで購入価格まで上げると、期間の効果と借入額の増加が混ざり、何が家計を重くしたのか見えなくなります。45
住宅金融支援機構の返済プラン比較シミュレーションでは、返済額だけでなく諸費用を含む総支払額を最大3プランまで比べられます。最初の一歩は、希望物件の価格を入力することではなく、同じ5000万円のまま期間だけを変えることです。その後で、頭金、金利引下げ、繰上返済を一つずつ加えると、判断を変えた要因を追えます。5
Money Now編集部の見方:長期化は予算拡張ではなく家計の余白に使う
Money Now編集部は、50年返済の価値は借入額を広げることではなく、同じ借入額で家計の余白を確保できるかにあると考えます。今回の月約2万2500円の差を、教育費、生活防衛資金、計画的な繰上返済へ回せるなら、長い期間には役割があります。反対に、下がった月額の分だけ物件価格を上げれば、65歳時点の残高を減らす出口は遠のきます。245
50年が正解か35年が正解かを年数だけで決めるのではなく、月額の軽さに対して総額と将来残高をいくら引き受けるかを決める。それが比較の中心です。次に確認すべき数字は、あなたの収入が下がると想定する年齢の元金残高と、その時点までに用意できる金融資産です。45














